6月8日、アメリカの不動産テック企業「Propy(以下、プロッピー)」が、ウクライナの首都キエフにあるワンベッドルームの新築マンションをNFT化してオークションに24時間限定で出品した。実在する不動産がNFTとして取引されるのは世界初の試みであった。
ブロックチェーンを活用した不動産取引プラットフォームを開発したプロッピーは、投資会社のマーキュリアインベストメントと大手総合商社の伊藤忠商事が共同出資したことで話題になっている。
NFTとして販売された不動産は、Michael Arrington(マイケル・アリントン)氏が所有していたマンションだ。アリントン氏は、IT系のスタートアップやWebに関する情報を発信しているブログサイト「TechCrunch(テッククランチ)」、及び暗号資産ヘッジファンド「Arrington XRP Capital(アリントン・XRP・キャピタル)」の創設者である。
当マンションは、2017年にブロックチェーン技術を用いて販売された初の不動産であった。アリントン氏は、ブロックチェーンが不動産業界に革命をもたらすテクノロジーであることをより印象付けるために、自身が所有する不動産をNFTとしてを販売することを決意した。
開始価格は2万ドル(約218万円)に設定され、最終的に約9.3万ドル(約1030万円)以上の価格で、起業家、及びフルスタックエンジニア、プロダクトマネージャーであるDevon Bernard(デヴォン・バーナード)氏によって落札された。
バーナード氏は、アリントン氏から世界初のNFT不動産を購入できたことに感奮していると述べた。
オークションでNFTを落札したバーナード氏には、所有権譲渡書類へのアクセス権の他、マンションの写真、デジタルアートのNFTが付与された。デジタルアートはキエフで人気を誇るストリートアーティストのChizz(チーズ)によって手掛けられた作品とのこと。実際にマンションの壁にも作品が描かれている。
アメリカのエンジェル投資家であるTim Draper(ティム・ドレイパー)氏は、Propyの試みに関して次のように述べた。
バーチャルな世界のものであったNFTが、実在する不動産に適用されることに胸が高鳴っている。近い将来、人々は建物を始め、空中権や物理空間におけるバーチャル上での権利をNFTを利用して購入できるようなるだろう。そんな未来が実現したら素晴らしい。
これまで、NFTといえば、アート作品や動画、コレクションカード、ゲームアイテムなどが扱われることが多かった印象を受ける。そのため、現実世界に存在する不動産がNFTとして取引されたことは、革新的な試みであり、多くの人にインパクトを与えただろう。将来的にNFTが新たなインフラとして利用されるようになる可能性も十分あり、そうなることを期待せずにはいられない。
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参考URL:
https://propy.com/browse/propy-nft/
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66191690T11C20A1TJ1000/