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イーサリアムの大幅アップグレード「Merge(マージ)」の背景や改善点を分かりやすく解説

イーサリアム
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イーサリアムブロックチェーンの大型アップグレードである「Merge(マージ)」の実装が、日本時間の2022年9月15日に完了した。

Mergeにより、コンセンサスアルゴリズム(合意形成の方法)が「PoW:Proof of Work(プルーフオブワーク)」から「PoS:Proof of Steak(プルーフオブステーク)」に移行変更され、環境負荷が軽減されるなどの改善や、今後のさらなるアップグレードの基盤が整うこととなった。

本記事では、Mergeの実装によりイーサリアムチェーンはどのように改善されたのかを分かりやすく解説する。

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目次

Mergeの目的とは

Mergeの目的は、大きく以下の2点に集約される。

  • ネットワークのエネルギー消費量を削減すること
  • 高騰するガス代(取引手数料)を解決する下地を作ること

イーサリアムやビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)は、ネットワークを維持するためのエネルギー消費量が非常に大きいことが懸念されている。イーサリアムのネットワーク維持には年間約110TWhのエネルギーを消費しており、ビットコインに至っては、なんと年間約200TWhにも及ぶ。

また、現行のイーサリアムチェーンにおいて、1秒あたりに承認できる取引量は10件から15件とされており、取引量が増大すると取引速度が低下し、ガス代(取引手数料)が高騰する事態が度々生じている。

こうした問題はスケーラビリティ問題と呼ばれる。これら2つの懸念を解決する手段として、コンセンサスアルゴリズムをPoWからPoSに移行するアップグレードである「Merge」が実装された。

PoWからPoSへの移行は、スケーラビリティ問題の解決に向けた、今後のさらなるアップグレードの下地作りの役目を果たしている。

イーサリアム財団の試算によると、Mergeによって、エネルギー消費量は年間およそ0.01TWhに削減される見込みだ。さらに、PoSに移行後、イーサリアムのさらなるアップグレードを通して、スケーラビリティ問題を解決する計画が立てられている。

コンセンサスアルゴリズム「PoW」と「PoS」とは

イーサリアムは今回のMergeにより、コンセンサスアルゴリズムがPoWからPoSに移行された。

PoWでは、取引の承認に必要となる膨大な計算作業を最初に成功させた人が取引の承認者となる。承認者は成功報酬として暗号資産を受け取る。この計算作業をマイニングという。マイニングは一定時間ごとに行われ、世界中のマイナーが、成功報酬を求めてマイニングに参加している。

マイニングに参加するには、非常に高性能なマイニング用マシンが必要である。マシンを動かす電力だけでなく、マシンから放たれる熱を逃すための環境を用意するために大量のエネルギーを消費することから、「PoWは環境に悪い」などと指摘されている。

PoWはいわば、「仕事量(作業量)による証明作業をおこなう」コンセンサスアルゴリズムであるのに対し、PoSは「暗号資産の保有量や保有期間に応じて、承認者のなりやすさが異なる」コンセンサスアルゴリズムである。

PoSの場合、承認作業の報酬を得られるかどうかは、保有している暗号資産の量と保有期間が鍵を握るため、高性能なマイニングマシンは必要ない。そのため、大量のエネルギー消費による環境負荷を解消できる。

いずれのコンセンサスアルゴリズムを採用しても、「ブロックチェーンに新たな取引履歴をつなぐ」作業をすることに変わりはない。今回実装されたMergeは、その承認作業者を決める方法に関する抜本的な変更が行われたと理解しておこう。

なお、PoSに移行されたことで環境負荷に対する課題は解決される見込みであるが、スケーラビリティ問題を解消するには、シャードチェーンと呼ばれる仕組みをイーサリアムに組み込む必要があるとされている。

Mergeによりイーサリアムはハードフォークを実施

Mergeによってイーサリアムチェーンの方針が根本から改められたことで、「ハードフォーク」と呼ばれる分岐が発生し、イーサリアムに紐づく別の暗号資産が誕生した。

今回、従前のアルゴリズムであるPoWを用いたイーサリアムとして、「ETHPoW(ETHW)」が誕生。ETHWは海外の取引所などで無償配布(エアドロップ)されるなどして、一時的に約50ドルほどの高値をつけた。しかし、その後は断続的な下落が続く状況だ。

なお、Merge後のPoS版のETH価格に関して、市場全体がリスク回避の姿勢を強めるなどの状況も相まって下落したものの、Mergeが原因とは言い難く、影響は限定的と言えるだろう。

ETHWに限らず、新たに誕生した暗号資産に関しては、取引所に限らず、さまざまなマーケットプレイスやアプリケーションが支持を表明するかどうかで、価値は大きく上下する。各通貨の価格変動には、今後も注目しておこう。

イーサリアムのさらなるアップグレードについて

イーサリアムは今回のアップグレードである「Merge」を実施したが、今後、以下のアップグレードを行う予定である。

  • The Surge
  • The Verge
  • The Purge
  • The Splurge

次回予定されている大規模アップグレードは「The Surge」で、シャードチェーン(シャーディング)の実装によるスケーラビリティ問題の解決を目指している。同アップグレードは2023年内の実装を予定。

シャーディングとは、ネットワークを「シャードチェーン」と呼ばれる複数のチェーンに分けることで、取引の確認作業の負荷を軽減させる技術である。

現行のイーサリアムチェーンが、単一(1本)のチェーンで全ての取引の確認作業を行うのに対し、シャーディングにより、「1本のメインチェーン及び64本のシャードチェーン」で取引の確認作業を同時並行で処理できるように改善される。

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イーサリアムのさらなるアップグレードにも要注目

Mergeが実装されたことで、コンセンサスアルゴリズムがPoWからPoSに移行された。その結果、大量のエネルギー消費を回避でき、環境負荷への懸念を解消できると期待されている。

また、スケーラビリティを改善する下地として、Mergeの実装は役立っている。

The Surgeなどの今後のさらなるアップグレードを通じ、イーサリアムがユーザーにとってさらに使いやすく、環境に配慮したブロックチェーンになっていくことを期待しよう。

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