7月24日、中国のオークションハウス「上海嘉禾」で、前衛彫刻家、画家、及び小説家として知られている草間彌生氏による2作品「無限の網(MGPP)」と「無限の網(1959,c1979)」が出品された。落札者には、作品の流通文書や、展覧会資料、出版カタログ、証明書などのNFT化された関連資料も併せて付与された。
オークションのスタート価格は3800万人民元(約6億4500万円)であったが、結果的に1億500万人民元(約17億8000万円)で落札。草間氏の作品における過去最高入札額は、2019年にサザビーズ香港で扱われた「無限の網 #4」の約6240万香港ドル(約8億8100万円)だった。そのため、今回の出品で大きくオークションレコードを伸ばしたことになる。
草間氏は、強迫神経症に悩みながらも単身アメリカに渡り、前衛的な芸術センスで一世を風靡したアーティストだ。ニューヨーク時代に「無限の網」の制作を開始。業界内で高い評価を得て、同作品は初期作品の中でも特に象徴的なシリーズとなった。
同オークションは、デジタルアートを扱うNFTプラットフォーム「CryptoArt.Ai(クリプトアート.Ai)」と上海嘉禾が共同で企画したものだ。CryptoArt.Aiの持つブロックチェーン技術を活用し、落札者の権利が保証される仕組みを作ることが目的という。
通常、芸術作品の真贋鑑定は作風やサイン、取引の記録、文献などの判断材料を通して、人間の手で行われる。しかし、この鑑定方法は流通過程における課題として、長い間捉えられてきた。というのも、従来の方法では経年劣化により真贋の判断が難しくなってしまうためだ。
そこで、新しいソリューションとして、ブロックチェーン技術が活用された。芸術作品の流通文書や証明書をデータとして保存できれば、判断材料の劣化などを心配する必要がなくなる。さらに、作品に対し固有のIDが発行されるため、唯一無二の価値が保証されるというわけだ。
今回のオークションでは、世界的アーティストの草間氏による作品が扱われただけでなく、NFTを活用した画期的な取り組みであったため、多方面から注目を集めた。
オークションといえば、デジタルアーティストのBeeple(ビープル)氏の作品「Everydays – The First 5000 Days(毎日 − 最初の5000日)」が約75億円で落札されたことが記憶に新しい。今後はデジタルアートのみならず既存の芸術作品においても、NFTを活用する動きが見られるであろう。
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https://bijutsutecho.com/magazine/news/market/24389