2021年に入り大きな話題になっているNFT(Non-Fungible Token)。
NFT関連銘柄のエンジンコインは21年の始値13.298円から4月9日には369.768円(レートはGMOコイン)と27.8倍まで高騰、国内でもCoincheckなどがNFTマーケットプレイスをローンチしている。
そこで、今回はNFTの過熱感の背景分析とNFTの世界に何が起こるのか現状と今後の展望について解説する。
中島 翔
学生時代にFX、先物、オプションを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。あおぞら銀行でMBS投資業務に従事。三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワード、オプショントレーダー、Coincheckでの仮想通貨トレーディングとトレーダーを経験し、その後NYブロックチェーン関連のVCに所属しCWC株式会社を設立。
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2021年上半期のNFT市場の現状
NFTそのものは2017年12月に誕生したデジタル子猫のオークションゲーム「Cryptokitties」に始まる。
それ以降度々話題となることはあっても、今ほどの過熱感はなかった。
しかし、今年に入り海外NFTマーケットプレイス最大手のOpenSeaでは、21年1月の月次取引高約8億円に対して、2月には約100億円と一気に12.5倍に、3月にはさらに伸びて120億円を記録している。
NFT関連銘柄とされる関連銘柄は既に100種類を超えていますが、時価総額の大きな代表的なNFT関連銘柄の2021年始値と年初来高値の伸び率は、以下のようになっている。
Chiliz(CHZ) | 約3,822% |
Enjin(ENJ) | 約2,781% |
MANA(MAN) | 約2,126% |
軒並み20倍以上の高騰ぶりだ。
このNFTの過熱感の背景には何があったのか?
昨年のコロナショックから世界的な金融緩和の流れを受け、金余りの状況から20年10月から21年4月中旬迄続いたビットコインの高騰が起きた。
この仮想通貨バブルが発生した影響もあるが、一方で著名アーティストのデジタルアートがオークションで次々と億を超える金額で取引されたり、CoincheckがNFTマーケットプレイスをローンチさせたりと、現実面での話題の多さがこの過熱感の背景だと分析している。
現在、仮想通貨相場はアメリカのキャピタルゲイン課税率の引き上げ等の影響で下落をしているが、税率は下降調整されると思われる。NFTマーケットプレイスの新規オープンなども予定されおり、今後は回復基調になると考えられる。
NFTの魅力とは
NFTの魅力は投資対象としての魅力に留まらない。
筆者は実用面と関連ビジネスモデルの発展性に魅力の本質があると考えている。
NFTというとデジタルアート関連やブロックチェーンゲームの印象が強いが、ホームページのドメインやスニーカー、ウィスキー、権利関連など様々な物をNFT化して販売・取引をする事が可能だ。
特に芸能人やスポーツ選手、インフルエンサーなどの著名人やクリエーター等、著作権ビジネスに関係している方にとっては、NFTの非代替性は非常に魅力的でSNS等で積極的な支持を表明するのも頷ける。
実際に日本でも漫画家のたまきちひろさんがNFTマーケットプレイス「TOKENLINK」でオークション出品に取り組んでいる。
現在は、アーティストが画廊などの販売者に作品を売り、販売者が買取価格の何倍もの価格で販売しても、アーティストには利益が入らない構造だが、今後はNFTプラットフォームでの直接販売も可能となる。
NFTの最大の魅力は、アプリケーションさえあれば誰でも無料で発行可能な点であろう。
出品するマーケットプレイスさえあれば、誰でも簡単に販売する事ができるため、個人のクリエーターが更に活躍できる時代がすぐそこまで来ている。
また、個人のNFT販売をサポートするアプリケーションに始まり、コーチングビジネス、NFT販売マーケティングなどと、NFTの流通を支援する関連ビジネスの広がりが、仮想通貨の実用化につながり、世界を大きく変えるのではないかと考えている。
NFTはどのように活用されていくのか?
一般的にNFTはデジタルアート・ブロックチェーンゲーム・ドメイン・ブランド品・権利関連などに活用されていくと言われている。
特に投資対象となるアートはもちろん、有名ブランドの限定品などにNFTが活用されれば贋作の販売も減少し、正統な権利者が利益を得る事が可能となる。
また、ブロックチェーンゲームにおいても、NFTを導入することで異なるゲーム間でのキャラクターやアイテムの相互利用が可能となる。それに加え、アイテムの制作・販売もできるようになり、今まではクリアすれば終わりのゲームも自律成長する世界が来ると考えられる。
さらに、今まで個人では難しかったゲーム制作も、プラットフォームから無料配布されるSDKを利用することで、より簡単になった。
NFTはURIと呼ばれるWEB上のファイルを認識するための256ビットの識別子を紐づける。
URIには作成者、所有者、作成日、位置情報などのデータが記載され、その情報がトークンに付随することで、代替不可能な仕組みを作り上げている。
その点を考慮すると、法律文書など偽造防止が必要な領域のNFT化はその特性を上手く活かすことができるので、今後活用されると筆者は予想している。
また、自動車をNFT化しIoV技術と組み合わせて、管理台帳ごとブロックチェーンにデータを格納するといった使い方をすれば、中古車販売の信頼性を上げることができる。
このように、動産のNFT化をすることで、CtoCの活性化も期待できるであろう。
NFTの懸念点
一方で、NFTにもいくつか懸念点がある。
世界的なデザイナーの村上隆氏がNFT作品を出品後間もなくして、出品の停止と延期を発表した。
理由としては、推測も含むが作品の使用方法などを規定する販売ライセンス条件がトークン情報として入らず、権利行使の制限条項が法的に担保されない可能性があることが最も大きな要因であると思われる。
また、海外ではバンクシーの贋作が販売された可能性があり、詐欺だとすると被害額は1億円に上るとのこと。
この2事例から考察すると、NFTはトークンそのものは唯一無二であっても、そのオリジナルの証明までは出来ないという点と、所有権の証明ができるだけでデジタル作品そのものはコピー可能であるという点が懸念点となる。
現在、続々とNFTマーケットプレイスやNFT制作用のSDKの配布が始まり、NFT関連のインフラが整備され、一気に販売・流通体制が整いつつある。
NFTの制作が誰にでも容易にできるようになると、一気に出品・販売者が増加する。
そうすると供給過多となり、需要が追いつかなければ、最初は期待感を持って出品したクリエーターも作品が売れずに失望する事が増え、市場から離れてしまう懸念もある。
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NFT市場の今後の展望
21年4月現在、日本国内では、「TOKENLINK」「nanakusa」「Coincheck NFTマーケットプレイス(β版)」など6つのNFTマーケットプレイスがローンチしているが、新たにGMOコインを運営するGMOインターネットグループも「アダム byGMO」をローンチすると発表している。
また、ENJとERC-1155トークンのトランザクションを無料で即時実行するJumpNetを利用することで、誰もが無料でNFTを即時発行できる。
NFTの制作と販売が容易にできるようになれば、誰しもがNFT販売をできる時代がすぐに来る。
そうなるとNFTマーケットプレイスは矢継ぎ早にローンチされ、大手ECサイトもNFT販売に参入するはずだ。
「おそらく今後3~5年以内に、外から覗き込んでいた人々や大きくなるとは思っていなかった人々までをも取り込む、大きな統合が起こるだろう」
と米国の実業家でダラス・マーベリックのオーナーとなったマーク・キューバン氏も述べている通り、NFTが日常化し世界的な変化が起こる可能性は高いと考えている。
そのような展望を踏まえると、NFTトークンも自然淘汰はあるにせよ、いくつかのトークンは生存し、価格も数百倍、数千倍上昇するポテンシャルがある。
NFTを通じて、世界がどのように変化していくのか、NFTトークンとNFTビジネスがどのような発展を遂げていくのか、今後も大いに注目していくべきだ。
参考URL:
・OpenSea https://opensea.io/?locale=ja
・たまきちひろさん記事 https://www.jiji.com/jc/article?k=000000031.000041312&g=prt
・TOKENLINK https://www.tokenlink.io/
・nanakusa https://nanakusa.io/
・Coincheck NFTマーケットプレイス(β版)https://coincheck.com/ja/
・JumpNet https://ja.enjin.io/