2021年の仮想通貨業界における最大のトピックスは、やはり「NFTブーム」であった。
世間的にもNFTが注目されるきっかけとなったのは、3月下旬にクリスティーズでBeepleの「Everydays:The First 5000 Days」 が、約6935万ドル(約76億円)もの価格で落札された事だ。
時を同じくして、日本国内でもNFTマーケットプレイスが続々と登場し、1年間を通して様々な業界によるNFTへの進出が行われた。
そこで今回は、その2021年のNFTブームに関する分析と2022年の展望について考察したい。
中島 翔
学生時代にFX、先物、オプションを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。あおぞら銀行でMBS投資業務に従事。三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワード、オプショントレーダー、Coincheckでの仮想通貨トレーディングとトレーダーを経験し、その後NYブロックチェーン関連のVCに所属しCWC株式会社を設立。
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2021年のNFTブームを振り返る
まずは、2021年のNFTブームのトピックスを時系列で振り返ってみたい。
仮想通貨市場全体が2020年の後半から上昇したことにより、2021年1月には多くの仮想通貨長者が誕生した。
アーリーアダプターである彼らが次なる投資先として目をつけたのが「NFT」だ。
3月には、前述の「Everydays:The First 5000 Days」 が、約6,935万ドル(約76億円)、Twitter創業者による初ツイートが約291.6万ドル(約3.2億円)で落札されるなど、NFTに世間の注目が集まった。
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国内では、Coincheckが仮想通貨取引所として初のNFTマーケットプレイスをローンチ、他の仮想通貨関連企業もこれに続き、8月にはGMOコインが属するGMOグループが「Adam by GMO」を発表し、2021年12月末までに日本国内だけでも20近くのNFTマーケットプレイスが存在している。
また、BINANCE、FTX、Coinbaseなどの海外仮想通貨取引所でも次々NFTマーケットプレイスが誕生した。
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8月には、20年に誕生したばかりのイーサリアムキラーの素質十分な新通貨Solanaをbaseとした「Degenerate Ape Academy」がローンチ。最初の10分間で1万枚の猿のクリプトアートが売れたことで、Solanaの時価総額が仮想通貨全体の8位になるなど急上昇をみせ、NFTと仮想通貨の価格の相関性にも着目されるようになっている。
そして、夏の終わりころから話題となり始めたNFTが「Axie Infinity」だ。
これは、11月から始まった、「Metaverse」、「GameFi」への関心の高まりへとも繋がるが、P2E(Play to earn)の要素が強いNFTブロックチェーンゲームである。
NFTゲームアイテムを利用して、P2EのマネタイズができるNFTブロックチェーンゲームをGameFiと呼ぶが、GameFiは今後、NFTがキャズム(普及までの大きな溝)を超える大きな手がかりとなるであろう。
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2021年のNFT市場を分析
次に2021年のNFT市場を分析してみたい。
以下の図は、世界最大のNFTマーケットプレイスであるOpenseaの取引高の推移だ。
上図より、21年3月に前月から3.2倍の上昇、5月から6月にかけて3倍、7月にかけて2倍、8月にかけて3倍と驚異的なペースで取引高が伸びていることがわかる。
昨対12月でみると、実に88.75倍の出来高上昇となっている。
個別の銘柄に関しては、DAppRaderの情報が参考となる。
このデータは、過去1年という期間抽出ができないため全期間でのランキングとなるが、Openseaの取引高からフェルミ推定できるように、NFTの取引のほとんどが2021年のものである点から、2021年のデータと考えて良いだろう。
実際に取引が行われているNFTコレクションのトップはダントツで、「Axie Infinity」だ。
次いで、CryptoPunksやBored Ape Yacht Club(BAYC)、NBA Top Shotなどのクリプトアート系のNFTコレクションが人気だ。
NFT1アイテムあたりの単価では、CryptoPunksとBAYCが圧倒的に高額で、21年12月現在共に日本円で2,000万円を超える平均購入単価となっている。
その背景にあるのは、セレブリティを含む富裕層コミュニティによる支持、10,000個限定発行と、すべての銘柄が「ユニーク」であるという共通項が挙げられるであろう。
2022年のNFT市場はどうなる?
2022年のNFT市場はますます一般化し、キャズムを超える方向へと進んでいくと考えている。
2021年のNFTの盛況ぶりは古参の仮想通貨ユーザーと仮想通貨業界関連者がNFT市場を牽引したと言えるが、実際に世界的なブランドはNFTへの進出を始めている。
世界的なラグジュアリーブランドであるルイ・ヴィトン、グッチ、ドルチェ&ガッバーナや、スポーツブランドのナイキ、アディダス、世界最大のグローバル企業コカ・コーラなどの世界的な大手ブランドによるNFTのリリースが相次いだ。
これらの企業によるNFT進出は、一見ブランディング目的のように見えがちであるが、実は贋作の多いブランド企業ならではのNFTへの期待がある。
つまり、製造段階からNFTを利用して、真贋証明を付随した形で製品を販売することで、贋作の流通を防ごうとする目的が存在する。
実際にナイキなどは、真贋判定の目的から2019年頃からブロックチェーンの研究を始め、すでにいくつか特許の取得もしている。
このような動きに世界中の各ブランドが追随するということは容易に推測可能であり、NFTを用いて、真贋判定ができるようになる世界がまもなく実現することが予想される。
2022年に注目すべき分野は?
筆者の考える2022年に注目すべきNFT分野は「GameFi」である。
特にイーサリアムをベースとしたブロックチェーンの課題として大きく残るトランザクション処理の遅さと取引手数料の高さを解決しそうなブロックチェーンが出てきているため、それらのブロックチェーンを利用したGameFiに注目すべきだと考えている。
中でも最も注目しているプロジェクトはSolanaブロックチェーンを利用したGameFiの「StarAtlas」と「Solana」だ。
「StarAtlas」は 2620年の宇宙をモチーフとしたMetaverse内で行われるマルチプレイヤーオンラインゲームのGameFiで、ダイヤモンドでできた惑星の探索をメインに主要な派閥と職業を選択し、チームを組んで勢力を拡大したり、スペースシップに乗り込んで戦闘を行う。
ゲームアイテムとなるNFTはすでにFTXのNFTマーケットプレイスなどでも販売しているが価格は継続的に上昇している。
関連記事:宇宙をテーマにしたメタバースゲームのStar Atlasとは?始め方を画像付きで解説!
Soliceは、現在、プライベートセールス中のプロジェクトであるが、VR対応型のMetaverseだ。
プレイヤーはさまざまなペット、宝石、その他の収集品をNFTとして収集でき、収集品のほかにも自作のNFTアイテムやミニゲームを作成、販売ができたり、土地区画を商業利用することができる。
一方でブロックチェーンプロジェクト以外の既存のゲーム会社がGameFi化に動いたときには仮想通貨業界にも大きな影響を与えると見ている。
その理由としては、ゲームの世界において既にクオリティの高いMetaverse化が完成している点と、多くの固定ファンを抱えるゲームタイトルが複数ある点、既存のゲームのブロックチェーン化をする方がMetaverseの構築から始めるよりも工数が少なく、圧倒的な速さと予算の少なさで実現する点などが挙げられる。
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NFTの盛り上がりは2022年も続く
21年後半にはスクエア・エニックスのNFT領域への参画や世界第3位のゲームプロバイダーであるUbisoftなどのNFT進出もあり、MetaverseやGameFiの本格化や国内では楽天やメルカリによるNFT領域への本格進出も2022年に予定されており、2022年もNFTからは間違いなく目が離せない。
参考URL:
Dune Analytics・・・https://dune.xyz/rchen8/opensea
DappRadar・・・https://dappradar.com/nft
StarAtlas・・・https://staratlas.com/#
Solice・・・https://solice.io/